地盤沈下のその先

観たもの、読んだもの、聴いたものについての感想文を書きます。

「プリンセス・プリンシパル」と「フリップフラッパーズ」

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アニメ「プリンセス・プリンシパル(以下プリプリ)」が物の見事に人気を博し、10月現在、全話無料配信という英断が果たされどんどん視聴者が広がっていく様を見て

羨ましいなあ

と思ってしまうのが同じStudio3Hz制作の「フリップフラッパーズ(以下フリフラ)」のファンである自分である。

もちろん「プリプリ」もまたリアルタイムで十二分に楽しんでいた人間なのだが、その楽しさと比例していくのが「『プリプリ』を観ているみんな、『フリフラ』も観てくれないかな」という思いも高まっていくのは、この二作にはこの制作会社の芸風とも言える共通項が存在するからである。


一話完結のメソッド

「プリプリ」は放送順と時系列がイコールで繋がらない、毎話がジグソーパズルのピースのような作品だ。例えば放送順での第一話がcase13、第二話が飛んでcase1といった形で、視聴を進めていくことで情報を穴埋めしていくような楽しさを感じることができる仕組みになっている。

ここが諜報員という意味でのスパイの疑似再現、つまりスパイであるアンジェ達への感情移入への手助けの働きすら持っているのだが、時間を飛ばす、ということは週間アニメということを加味すれば「一話完結」という手法がかなり効果的であることがわかる。この回のこのキャラの発言・行動の裏付けを次の回でする、という情報補填の気持ちよさは、時間を置くといい感じに醸成されるのだ。


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7話(case16)でプリンシパルと初対面だった借金取り

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6話(case18)では望まぬ再会で素性を悟られないよう、ドロシーは彼らから顔を背けている

対して「フリフラ」における一話完結は、テーマ性重視によるものだ。ピュアイリュージョン冒険活劇という性質としては、ピュアイリュージョンの多様性が大きな核の一つとなる。この多様性をまとめ上げるメリハリとして「一話分でひとつのピュアイリュージョンを書き上げる」というものであり、来週(次回)のピュアイリュージョンはどんなものだろう、という純粋なワクワクさ加減も演出できる。

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3話ではどこかで見たことのある映画のオマージュや

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有名な某アニメーションへの力強い意識など、一話分でこれだけのフレキシブルさを見せつけてくれる

週間アニメにおいて「来週への引き」のようなものは得てして前提のようなものに捉えられがちだが、本編内容そのもので来週への引きとする強さはこの二作の主張していきたい共通点だ。


丁寧な、魅せる画面作り

「フリフラ」の作画はとにかく丁寧で、枚数も圧倒的だ。つまり比例して画面に映る情報量も多くなり、その分セリフを最小限に抑えることができる。「フリフラ」に「考えるな、感じろ」というコメントが頻繁に付くのは、こういったセリフの外の情報・サブテキストを読み取る感度がある程度必要、ということの現れのようにも思える。しかしこれは視聴回数を重ねることで起きる気付きと置き換えることもでき、作品そのものの奥深さ、寿命を延ばしてくれる手法である。

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最もシンプルな例だが、先に電車や踏切を見せておくことで後の「まだ乗れる!」とのごく短いセリフの内容が判明するようになっている

こういった画面いっぱいに伝達を任せるスタイルは「プリプリ」にも受け継がれており、単純なスパイの任務であるがゆえに彼女らの行動を映すのみにとどめ隠密行動であることを表す意味合いもあるが、プリンシパルの吐く噓を「噓である」ことと裏付ける事実の情報として画面とセリフの情報の食い違いを
作り上げるという、メインテーマをよく表現している。

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セリフをフェイクとしてメモ書きで本当の示し合せをする、スパイならではのやり取り


少女同士の密で確かな関係

ありていに言えば「百合」という関係性になろうが、恋愛関係という枠にとどめておくには惜しい奥行きをそこに描き出してくれるのが「プリプリ」と「フリフラ」である。

「プリプリ」においてはアンジェとプリンセスがそれにあたる。幼いころに立場を入れ替えて、互いを想いながらそれぞれの順応力で生き抜いた先での再会、ともに抱く大願の成就など、言語化するには無粋なくらいにブラッシュアップされた関係性が垣間見える。そこはぜひ本編を視聴した上で、思いを馳せてほしい。

「フリフラ」はそういった関係の多様性がまた取り上げられる。ココナを中心としたパピカとの積み上げられていく友情、ヤヤカとの幼馴染としての気のおけない関係、先輩との尊敬・可愛がりといったまさに「先輩と後輩の関係」など、かなり多角的にココナの身辺環境の掘り下げが為されている。これは「ココナという主人公のモラトリアム」という一種の広義上の「ピュアイリュージョン」として展開されていく面白さも備え、またこれらを踏まえてココナが成長していく緩やかなカタルシスへのさきがけでもあるのだ。


まとめ

・一話でまとまったお話が心地いい
・画面が主張することの意味が濃い
・百合描写の天才

「プリプリ」は2017年10月10日までニコニコ動画で全話無料配信、「フリフラ」はAmazonプライムバンダイチャンネル他で配信中。片方しか観たことのない人には特に、ぜひ両作のシンクロニシティを感じ取ってほしい。



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